法人向けIT製品 選び方・比較ガイド
初回公開日:2019/02/04執筆:柳谷智宣
顧客管理や営業支援を強化するなら、名刺管理から始めよう!CRM・SFA機能を備える名刺管理サービス5選

名刺情報の管理から始めるSFA・CRM
ビジネスの生産性や売り上げを高めるため、「CRM」や「SFA」といったシステムを導入することがあります。
CRMはCustomer Relationship Managementの略で、「顧客管理システム」や「顧客関係管理」という意味です。顧客との関係を適切に管理し、良好な関係性を築くことを目的としています。
SFAはSales Force Automationの略で、「営業支援システム」という意味です。案件や商談を管理し、営業のフローを可視化し、生産性を向上することを目的としています。
どちらも、顧客情報の管理が必須です。CRM・SFAの世界トップシェアはSalesforceですが、そこまで多機能を求めていなかったり、コストを抑えたい場合は、名刺管理サービスで対応できることもあります。
名刺管理サービスは名刺データを読み込んで、正確な情報を登録します。その上で、コンタクト情報の履歴を表示できると、商談を管理できるようになります。また、名寄せができると、社内で情報が行き違うこともなくなります。名刺管理サービスは、基本的に人を起点とした管理が得意でCRM寄りと言えますが、従業員情報からアクセスすればSFAのようにも利用できます。
相手企業の組織ツリーが表示できると、人脈マップを見ながら営業プランを立てて見逃していた売り上げを獲得できるかもしれません。一斉メール送信機能があれば、積極的な営業施策の実行や、顧客との関係性の維持に役立ちます。
獲得した顧客リストにメールを一斉配信する機能も重宝します。リストを柔軟に絞りこみ、必要に応じてダイレクトメールを打ったり、イベントのお知らせを伝えたりすることもできます。通常は、登録したメールアドレスから配信されますが、名刺管理サービスによってはその名刺を交換した担当者からの個人メールのように配信する機能を備えています。このOne to Oneメールを利用すると、メールの開封率が向上します。
一般的なCRMやSFAでは企業や人のデータが重複して登録され、カオスな状態になってしまうことがあります。あえてCRM・SFA専用のツールではなく、名刺管理サービスを利用するメリットとしては、名刺を管理するので、企業と人のデータをシンプルに扱うのが得意な点が挙げられます。その上で、商談管理機能などがあれば、名刺管理サービスをCRMやSFAとして活用できるようになるのです。今回は、そんなCRMやSFAの機能を備えた名刺管理サービスを紹介します。
CRM・SFAを強化するなら検討したい名刺管理サービス5選
新しいCRM・SFAの形を提案する「Sansan」
「Sansan」は国内トップシェアの名刺管理サービスです。テレビCMで松重豊さんが「それさぁ、早くいってよぉ〜」と嘆いているのを見たことがある人は多いでしょう。Sansanを開発、提供しているSansan株式会社は、2007年に創業し、現在は海外進出も加速させている名刺管理サービスの老舗です。人力により名刺データをミスなく登録してくれるうえ、その情報を活用するための機能開発に注力しています。2018年10月には京都市内に、AI技術者の活動拠点となる「Sansan Innovation Lab」を開設しました。
充実した名刺情報管理機能はもちろん、人物に商談を紐付けて管理する機能を備えています。CRMやSFAとしてのメッセージも打ち出しており、人脈の総合ソリューションとして活用されています。

Sansanのメリット
顧客管理機能が充実しているうえ案件管理機能も搭載
「Sansan」では、氏名やメールアドレス、住所、会社名などが一致すれば、名寄せが自動的に行われます。転職した場合など、氏名だけが同じ場合などは手動名寄せを行います。社内のスタッフが同じ人物と名刺交換した場合は、名寄せして人物IDをまとめることもできます。しかし、人物のタグやメモはそれぞれの社内スタッフが個別に管理できます。
交換した名刺の情報から、相手企業の詳細な組織ツリーを作成したり、その企業に関するニュースをチェックできるので、営業活動を行う際に有効に活用できます。また、メール配信機能も備えているので、プレスリリースも気軽に送れます。その際、One to One方式も利用でき、名刺を所有しているユーザーのメールアドレスから送信できます。加えて、ユーザー自身のアドレスから一斉送信することも可能なため、自分が今担当している顧客にお知らせを送る際などに利用できます。
案件管理機能も備えており、進捗を名刺に紐付けて管理できます。営業の状況を可視化できるので、受注できた案件と受注できなかった案件でどこに違いがあったのかをチェックできるのです。案件項目は自由に設定でき、幅広い業種で活用できるのも特徴です。



Sansanはこんな方におすすめ
大量の名刺を登録して案件をシンプルに管理したい企業に向いている
「Sansan」は名刺管理サービスですが、CRMやSFAの基本的な機能は押さえています。連携機能を備えているので、ほかのCRMやSFAとつなぐこともできますが、利用するツールが増えてしまいます。企業としては運用コストはもちろん教育コストもかかりますし、個人情報を扱うのですから監査もその分手間がかかります。重要なデータを分散させたくないというニーズもあるでしょう。
名刺の登録数が多く、まずは人物管理を完璧に行い、CRMとSFAにチャレンジするといった企業に向いています。
CRM・SFAが得意な企業が手がける名刺管理サービス「アルテマブルー」
キヤノンエスキースシステム株式会社が提供する名刺管理サービス「アルテマブルー」は、2008年に発売され、企業規模を問わずに導入されています。キヤノンエスキースシステムはもとより、Microsoft Dynamics 365を使ったCRM・SFAソリューションを提供しており、CRM・SFAは得意分野です。
柔軟な料金体系も魅力です。1IDあたり、月額2,500円で、名刺の取り込みを自分で補正するなら0円、オペレータに頼む場合は50円/枚、となります。一斉メール送信も従量制なので、運用規模に応じて手ごろな価格で運用できるのが魅力です。

アルテマブルーのメリット
名寄せや人脈マップ、一括送信、活動履歴など基本機能を網羅する
名寄せ機能は、氏名/氏名と会社名/メールアドレスなどを条件にでき、重複データが登録されたときには通知が来ます。オフィスの移転などがあった場合、住所や電話番号などを一括で変更できるので、古い情報の名刺が残ってしまう心配がありません。
活動内容を登録することもできます。名刺に紐付けて、営業活動の記録を残せるのです。過去の営業活動を確認すれば、休眠顧客の掘り起こしにも役立ちます。


人脈マップの表示やメールの一括配信機能も備えています。通常のメール一括配信の他、差出人に個別のメールアドレスを設定した状態で、私信のようなOne to Oneメール配信も可能です。ただし、メールの送信はオプションとなり、送信数により料金が発生します。料金は1〜5,000通が10,000円、5,001〜1万通が20,000円です。
アルテマブルーはこんな方におすすめ
初めての名刺管理サービスでSFAにチャレンジしたい企業向け
使いやすいので、初めて名刺管理サービスを導入する企業に向いています。コンサルタントのアドバイスを受けながら、2週間のトライアルがあり、その後で導入の判断ができます。コストも比較的安価なのもポイントです。
商談管理機能はそこまで充実している訳ではないのですが、同社では「アルテマブルー」とkintoneを連携させたり、本格的なSFA運用のためにDynamics SFAと連携させるソリューションも用意。Dynamics CRMと連携し、SFAを拡張した総合CRMを利用することも可能です。
名刺管理×SFA×マーケティング連携に強い「ホットプロファイル」
「ホットプロファイル」を開発している株式会社ハンモックは、IT資産管理や情報漏洩対策などのソリューションを提供している法人向けのソフトウェアメーカーです。名刺管理サービスの「ホットプロファイル」は、その中で名刺管理と営業支援を実現します。名刺管理を起点にして、SFAと見込み顧客を発掘するマーケティングも行い、3つの機能を統合しているのが特徴です。複数のツールを運用するよりも、低コストで高効率の管理を実現できます。

ホットプロファイルのメリット
SFA機能が充実しており名刺の情報を起点に営業とマーケティングに活用できる
ビジネスをサポートするための、名刺管理ソフトというコンセプトで作られた製品なので、SFA機能が充実しています。「お客さまカルテ」では、最新の名刺情報や企業のプロフィール、取引の状況などを確認できます。その企業のニュースや人事異動の情報なども閲覧できるので、顧客企業のことを包括的に把握できます。これは、営業の現場でとても役に立つ情報になります。
「報告」には様々な情報を記録できるので、上司は状況をチェックできますし、営業報告なども最小限の手間ですみます。情報が蓄積していけば、営業支援にも活かせるでしょう。
「商談」には、扱っている製品や金額、商談のステージなどを登録できます。まさにSFAというところです。さらに、MA(マーケティングオートメーション)ツールとしての機能も備えており、見込み客を抽出してメールを配信し、ホットリードを発見してアプローチするといったことが可能です。

もちろん、メール送信機能も充実しており、通常の一括配信方式やOne to One方式に加え、メール内のURLをクリックしたかどうかのログを取得することもできます。

ホットプロファイルはこんな方におすすめ
名刺管理とSFA、マーケティングのツールをまとめたいと考えている企業向け
SFAと名刺管理サービスの導入を考えている企業にぴったりです。SFAとMAの機能が充実しており、使い倒せば実績向上が期待できます。しかも、名刺管理とともにひとつのソリューションなので、ユーザーの学習コストが抑えられます。運用時も、複数のツールを切り替えたりする必要がないので、いろいろと気を散らさずに済みます。
PCソフトでビジネス名刺を手軽に管理できる「やさしく名刺ファイリング」
「やさしく名刺ファイリング PRO v.15.0」は株式会社エヌジェーケーが開発・販売している名刺管理ソフトです。Windows 7以降に対応しているインストール型のソフトで、データはもちろんPC内に保存されます。クラウドサービスが登場する前はこのようなパッケージ型が一般的だったのですが、現在は逆に製品数が少なくなっています。しかし、名刺のデータを外部に出したくない、という場合は貴重な選択肢となります。
専用のカラースキャナを同梱したパッケージのほか、PFUの「ScanSnap iX500」といったドキュメントスキャナとのセット商品もあります。もちろん、ソフトは買い切りで、その後の月額などは発生しません。

やさしく名刺ファイリングのメリット
コンタクト履歴やファイルを残せるので簡易SFAとして活用できる
名刺ごとに営業したり面談したコンタクト履歴を保存できます。添付ファイルも登録できるので、その時に使った見積書や作成した議事録などを一緒にしておけます。簡易的なSFAとして活用できるのです。
名刺データから任意の条件で絞り込んだリストに、ダイレクトメールを手軽に送ることが可能です。ただし、メールソフトに送信先のデータを受け渡すだけなので、マーケティングに有機的に活用するのは難しいかもしれません。さらには、リスト印刷やタックシール印刷なども可能で、郵便物にも対応します。
氏名と社名から名寄せする機能も搭載しています。昇進や異動、同僚が新しく名刺交換したといった場合でも、同一レコードにまとめることでデータを汚すことがありません。

やさしく名刺ファイリングはこんな方におすすめ
名刺データを自社内で管理・運用したい企業にお勧め
PCソフトなので、自社内でデータを管理できます。この点を重視する企業には貴重な選択肢となるでしょう。ソフトウェアライセンスは1ライセンス8,580円、10ライセンスなら60,500円と安いのが魅力です。とはいえ、中小企業向け、ということでもありません。「THE 名刺管理 On-Premise」というサービスも用意しており、自社内にサーバーを設置し、セキュリティポリシーに従って名刺を管理することも可能です。ただし、本格的にSFAとして利用するには、そこまで機能が充実しているわけではありません。CSVでデータをエクスポートし、ほかのSFA/CRMと連携している企業もあるそうです。
ちなみに、同社は「名刺ファイリングCLOUD」というクラウドサービスも用意しており、「名刺管理ソフト やさしく名刺ファイリング PRO v.15.0」で作成したデータを同期することも可能です。500枚までは無料で利用でき、それ以上は有料のサービスチケットを購入する必要があります。
CRMやSFAに求めるレベルと自社の業務フローを把握してから製品を選ぼう!
現在の名刺管理サービスは、単なる住所録作成ではなく、その後の情報活用まで視野に入れて開発されています。とはいえ、SFAやCRMとして活用するためのレベル感はそれぞれ異なります。もちろん、Salesforceのような専門ソリューションと比べると機能は少ないですが、その分手軽に運用を開始できるというメリットもあります。今回紹介したソリューションであれば、中小企業でも問題なく活用できるでしょう。1万人を超えるような大企業だと、コストはかかりますが、Sansanのように大規模な運用を想定するソリューションが向いています。
名刺情報は活用することが目的です。自社の業務フローをしっかり考え、その効率を向上してくれるような支援サービスを選びましょう。
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